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月のクレーターになった第二の脳を、もう一度銀河に戻した話

Claude Codeを使い始めて、気がついたら仕事のメモも案件の記録もノウハウも、かなりの量が溜まっていた。案件ごとのメモリファイル、学んだことのまとめ、ガイドライン類。どれも「あとで役立てよう」と丁寧に書き続けた結果、いつの間にかフォルダが相当ごちゃごちゃになっていた。そろそろ整理しないとまずいな、と思っていたちょうどその頃、X(旧Twitter)のタイムラインで「第二の脳」という言葉をよく見かけるようになった。元OpenAI/TeslaのAndrej Karpathy氏が「Claude CodeとObsidianで第二の脳を作る」という話をしていて、エンジニア界隈でかなり話題になっていた。

Obsidianというのは、マークダウンファイル同士のリンクをグラフで可視化してくれるツールで、自分のナレッジが「ファイルの繋がり」として視覚化される。読んでいるうちに、これは自分のフォルダにも使えそうだと思い、整理をする前にまず入れてみることにした。

※「Obsidian(オブシディアン)」とは、マークダウンファイルを管理・編集できるメモアプリです。ファイル間のリンクを地図のように可視化する「グラフビュー」が特徴で、知識を繋げて管理する「第二の脳」ツールとして活用されています。

入れた瞬間、宇宙が広がった

Obsidianを開いて、自分のナレッジフォルダを読み込ませた瞬間、思わず声が出た。

画面の中心にMEMORYという大きなノードがあって、そこから放射状に色とりどりの点が広がっていた。赤いのがプロジェクトのメモリ、緑が参照系のファイル、青がフィードバックの記録、黄色がガイドライン。自分の頭の中にあるはずのものが、ちゃんと色分けされて宇宙みたいに広がっている。

「あ、これは管理が捗りそう」と素直にテンションが上がった。ファイルを開かなくても、グラフを見るだけで「この案件のメモはここから繋がってるんだな」とか「このガイドラインはこの案件で参照してるんだな」というのが一目でわかる。なんというか、自分の仕事の地図を初めて手に入れた感覚だった。

整理前のObsidianグラフビュー(中心のMEMORYノードから放射状に広がる構造)
整理前のグラフ。中心から銀河のように広がる構造が気持ちよかった。

翌日、宇宙が月のクレーターになっていた

テンションそのままに、翌日は本題のフォルダ整理に取りかかった。

それまで案件のファイルは「products」と「projects」という2つのフォルダに混在していた。30ほどある案件がそこに並んでいて、どの案件がどの取引先のものかは名前から推測するしかない状態だった。それを「取引先ごとにまとめて、その下に案件フォルダを置く」という形に整理する作業だ。

移行自体はClaudeに手順を組んでもらいながら進めた。移動するファイルは膨大で、スクリプトを使って段階的に進めていった。数時間かけて作業が終わり、フォルダ構造がきれいになったのを確認して、Obsidianを開いた。

そこで目に入ったのが、これだ。

フォルダ移動後のObsidianグラフビュー(外周に孤立ノードが大量に散らばる月のクレーター状態)
「月のクレーターじゃん…」と思わず言った。

中心に何かの塊があって、その外側に無数の白い点が、文字通り「ぽつぽつ」と散らばっている。さっきまであった銀河の構造が消えて、ただの点の集合になっていた。

何が起きたかはすぐわかった。ファイルを移動したことで、ファイル間の相対パスが全部変わってしまったのだ。「このガイドラインを参照する」「このメモリからプロジェクト情報を引く」という261箇所のリンクが、移動によって一斉に「迷子」になっていた。繋がりが切れたノードはグラフ上で孤立する。30案件 × 複数のメモリやガイドライン参照 = 数百のリンクが同時に切れた結果がこれだった。

スクリプトで銀河を取り戻す

幸いなことに、移行作業のときに理想とするフォルダの構造案を作って整理。今のパスを新しいパスの参照を一括で書き換えるスクリプトをClaudeに作ってもらっていた。「まず何をどう変えるか確認してから実行する(Dry-runモード)」という設計で、本番実行前に「これだけのファイルを、こういうルールで書き換えます」というリストを出してくれる仕組みだ。

まず第1弾のスクリプトを実行した。案件名単位でパスを置き換えていくもので、1813ファイルの中から対象を絞り込んで処理していった。

1回目のスクリプト実行後のObsidianグラフビュー(中心は復活、外周に星屑が残る状態)
1回目のスクリプト後。中心は戻りかけているけど、外周にまだ星屑が残っている。

グラフを確認すると、中心のクラスターがある程度見て取れる状態にはなったけれども、外周にまだまだ孤立している点がびっしりある。小宇宙もある。確認してみると、「具体的な案件名を持つパス」は直せたものの、「テンプレート表現のパス」が残っていた。ドキュメントの中に汎用的な書き方で書かれたパス参照が、第1弾では拾えていなかった。

そこで第2弾として、汎用パターン専用のスクリプトを実行した。「旧フォルダ名を含む汎用的な書き方」をまとめて書き換えていく処理で、これを流したら残りの孤立ノードもほぼ消えた。

全スクリプト完了後のObsidianグラフビュー(銀河構造が完全復活した状態)
銀河が戻ってきた。しかも移動前よりすっきりした気がする。

グラフが戻ってきた。しかも、今回の整理で取引先別にフォルダがまとまったので、グラフ上でも同じ取引先の案件が近くにまとまって表示されるようになった。移動前より、むしろ構造が分かりやすくなっている。

「直った気」ではなく「直った」が見える

このグラフで一番良かったのは、「直ったかどうかが目で確認できる」ことだと思う。

ファイルの中身を書き換える作業は、テキストエディタでやっても「たぶん直ったと思う」という感覚で終わることが多い。でもグラフがあると、銀河が壊れたのが目で分かって、銀河が戻るのも目で分かる。「直った気」ではなく「直った」が視覚で確認できる。これは意外と大きな違いだった。

それから、ナレッジは「育てる」だけじゃなくて「メンテナンスする」ものだということも、今回改めて実感した。案件が増えてファイルが増えると、どこかのタイミングで整理が必要になる。そのときにグラフが壊れるのは仕方がない。大事なのは「壊れたことに気づける状態にしておくこと」と「直す手段を持っておくこと」だ。

今後は、フォルダを大きく動かす前にバックアップを取るのと、移動後はすぐグラフを確認する、という手順を入れておこうと思う。それだけで、今回みたいに「あとから惨状に気づく」ということが防げるはずだ。

整理した後の自分のナレッジが、ちゃんと繋がって光っているのを見ると、やっぱりいい気分になる。この感覚を維持できる運用を続けていきたい。

※この記事はNPCの中の人の実務経験をもとに書いています。

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