屋号「npc」の由来とNPCとして働く感覚
フリーランスでブランド名を決める時の話
フリーランスでやっていく時に、最初にぶつかるのが「屋号どうしよう問題」。本名でいくのか、何か名前を考えるのか。考えれば考えるほど、自分の名前って何かしっくりこない。誰かに見せられるロゴも欲しい。でも、いざ候補を絞ると「これでいいのか?」が止まらない。
2016年ごろ、フリーランスとしてWeb制作を始めた。屋号のことはずっと先送りにしていて、結局10年近く本名のまま走ってきた。最終的に「npc」(エヌ・ピー・シー)と決めたのは2026年の春。今回は、なぜこの名前にしたのか、そして「NPCとして働く」という感覚が、その後の仕事のやり方をどう決めたかを書いてみる。
「npc」はゲームの「NPC」から取った
ゲームをやる人なら馴染みのある略語だと思う。NPC=Non-Player Character。プレイヤーが操作しないキャラクター、つまり「主人公じゃない側」のことだ。村人A、武器屋のおじさん、クエストの依頼人みたいなポジション。物語の中心ではないけど、主人公の冒険を支える役割を持っている。
自分は屋号にこの「NPC」を選んだ。理由はシンプルで、クライアントの仕事において、主人公はクライアント本人だと思っているから。自分はその脇で、必要な道具を渡したり、ルートを案内したりする側。前に出てヒーローになる必要はないし、なりたいとも思わない。
ロゴは全部小文字の「npc」にした。大文字の「NPC」だと、何かの団体っぽくて重たい印象になる。小文字にすると、ぐっと等身大で、肩肘張らない雰囲気になる。これも「主人公じゃない感」を出すための選択だった。
主人公型の屋号と、NPC型の屋号
ブランド名って、本人が思っているより仕事のスタイルを縛ってくる。「Creator」や「Studio」を名乗ると、自然と「自分が前に出て表現する仕事」を呼び込む。逆に、自分の名前そのものを屋号にすると、「あなたじゃないとダメ」みたいな空気が生まれて、規模を広げにくくなる。
自分が選びたかったのは、もっと中立で、機能的な名前だった。実際の仕事の中で、自分の役割を一言で表すなら「困った時に呼ばれる便利屋」「裏方」「ディレクターの右腕」が近い。だったら、最初からそれを名乗ってしまえばいい、と思った。
2つの考え方を並べるとこんな感じ。
- 本人の表現が前に出る
- 「あなただから頼みたい」が増える
- 規模を広げにくい
- 本人のキャラに左右される
- クライアントが主役
- 機能で評価される
- 仕事の幅を狭めない
- 長く使える
「NPC」を名乗ると、自然とクライアントを立てる動きになる。提案する時も、自分の趣味を押し付けるんじゃなくて、相手のサイトや事業の文脈に合わせて選択肢を出す。これは意識してやっているというより、屋号がそういうマインドを引き寄せている感覚に近い。
「NPCとして働く」感覚の実際
具体的に、NPCとして働くってどういう感覚かというと、こんな順番で仕事を組み立てている。
大事にしているのは、「選ぶ権利はクライアント側に残す」こと。RPGに例えると、武器屋のおじさんは「これがおすすめだよ」と言うけど、装備を決めるのはプレイヤー本人。自分も、複数の選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを並べて、最後の決定はクライアントに委ねるようにしている。
ありがちな失敗が、「これがベストです」と一本で押し切ってしまうこと。これをやると、後で「思っていたのと違う」が起きやすい。NPCとして振る舞うなら、選択肢を渡す側に徹したほうがトラブルが減る。
AIとの関係でも「NPC」感覚は活きる
最近はClaudeやChatGPTといったAIと一緒に仕事をしている。トニー・スタークとJARVISの関係が近いと感じていて、判断は自分、整理と実行はAI、という分け方をしている。
面白いのは、自分から見るとAIはJARVIS(頼れるアシスタント)なんだけど、クライアントから見ると、自分とAIをひとまとめにした「npc」が裏方のNPCになっている、という入れ子構造になっていること。誰が誰を支えているかは、視点次第で変わる。
ブランド名が仕事のスタイルを決める
決めてまだ日は浅いけれど、すでに感じているのは、屋号は自分の働き方を決めるツールだということ。「npc」と名乗ると決めた瞬間から、自分の中で「主人公じゃない側」としての立ち位置がはっきりしてきた。先に名前があって、後から自分が追いついていく感じに近い。
もしこれから個人ブランドの名前を考える人がいたら、「自分がどう見られたいか」より「自分がどう動きたいか」で選ぶのを勧めたい。名前は、毎日自分が口にする言葉でもあるから、しっくりこない名前を10年使うのはしんどい。
まとめ:脇役だから続けられる
主役になりたい時期もあったけど、結局のところ、自分は「クライアントの冒険を裏で支える方」が性に合っている。npcという屋号は、その自覚を毎日思い出させてくれる装置みたいなものだ。
派手さはないけど、確実に役に立つ。気がついたら同じ街にいて、必要な時に話しかけられる存在。そういうフリーランスでありたい、という意思が「npc」という3文字に詰まっている。
※この記事はNPCの中の人の実務経験をもとに書いています。