AIに『かっこよく作って』と頼んだら30分でモックが完成した
「AIを使えば、1コマンドで数十万円のサイトが作れる。外注業者はいなくなる」という投稿が流れてきた日、じゃあ本当かどうか自分でも試してみようと思った。
Web制作の仕事をしていると、こういう投稿は定期的に目に入る。気にしないようにしていても、「実際に試したことがあるか」と問われると、正直なところ手を動かしたことがなかった。ちょうど進行中の案件のデザインモックをAIに作らせてみる機会があったので、今回はあえてClaudeに全部任せてみることにした。
渡した情報と出した指示
Claudeのデザイナー役に渡したのは、次の3つだ。
そのうえで、指示はひとこと「かっこよく作って」。
※「Claudeのデザイナー役」とは、デザインの判断に特化した設定を与えたClaudeのことです。配色・書体・レイアウトの方向性を一括して任せています。
画像は別途、gpt-image-2という画像生成AIで8枚用意した。ヒーロー用の1枚、訴求方向別の2枚、講師のイメージ写真4枚、お問い合わせに誘導するセクション用の1枚。こちらはClaudeではなく、OpenAIのAPIを直接使って自分が動かした。
※「gpt-image-2」は、文章で説明するとそれに近い画像を生成してくれるAIです。「暗い背景にステージ照明」などと文章で入力すると、それらしい画像が返ってきます。
30分後に手元にあったもの
指示を出してから約30分後、HTML1本と画像8枚が手元にあった。
落ち着いたインク黒のベースカラー、クラシックな雰囲気の書体、非対称のレイアウト──見た瞬間、「これはかっこいい」と思った。配色や書体を選んだだけでなく、ヒーローセクションのコピーや教室の理念を語る文章の流れまで、設計に沿って整えられていた。
生徒数の欄は「—」になっていた。「実際の数字が分からないので空欄にして」とあらかじめ伝えていたからだ。架空の数字を盛るのは好きではないし、指示通りに動いてくれるかを確かめるのも実験の一部だった。ちゃんと「—」になっていたので、一安心した。
完成した画面をながめながら、冷めかけていたコーヒーを飲んでいた。
「かっこよく作って」だけで出てくる理由
30分でここまで仕上がってくるのは、正直おどろいた。同じものを自分で一から作ろうとしたら、どう考えても半日以上かかる。
でも、手元のモックをながめながら気づいたことがある。これがただのテンプレート量産品にならなかったのは、「かっこよく作って」の一言だけではなかった。その前に渡した「オーナーの背景」と「訴求の方向性」があったからだ。
その情報を手元に持っていた理由は、その案件のことを実際によく知っていたからだ。背景を何も伝えずに「サイトのモックを作って」と丸投げするだけでは、どこにでもあるような無難なものしか出てこない。何を渡すかが、できあがりの質を決める。
「AIは制作者の代わりになる」のではなく、「経験や判断力に掛け算される」と思った。何年も案件を積んできた人間が使うのと、そうでない人が使うのとでは、出てくるものがまったく変わる。この実験を通じて、そのことがはっきりと見えた気がした。
試してみて変わったこと
この実験が終わった後、「戦える気がしてきた」という気持ちが出てきた。
「AIでサイトが作れる時代に、制作者の価値はどこにあるか」という問いは、ずっと頭の中にあった。今回の実験で、その答えの一部が見えた。使いこなすための「設計と指示の力」、そしてその背景にある「経験と判断」──これは、簡単には代わりの利かない部分だと思う。
同じことで迷っている制作者の方の、何かのヒントになればうれしい。